あれ以来、シオンはカイルに歯向かうことなく過ごした。

……油断させて、ここから逃げる。

生きて、もう一度ファルに会うために。

……せめてファルの事を考えていたい。

エリルの森で出逢い、気を失った私を胸に抱いて介抱してくれたファル。

互いの想いをキスで確かめ合ったのが、凄く昔に感じる。

私がピアスを無くして、ファルが小さな花で金のピアスを作ってくれたのよね。

……あれ?

シオンはスーッと寒気がした。

……ない!

ファルに貰ったピアスがない!!

アイーダに咬まれて、誰かにここに連れられてきて……。