何と素晴らしい男だろう。

美しさと強さ、時折見せる無邪気な笑顔。

あの、逞しい腕に抱かれ、厚い胸に顔を埋めて愛を語らいたい。

そんな幸せな女は、自分であって欲しい。

アイーダは王子ファルとの出会いを嬉しく思った。

だが、次の瞬間には、絶望の闇が身体中に広がった。

自分は、魔性だ。

かつては人間であったが、悪の女神に殺され、生まれ変わる事を許されない魔性としてさ迷う運命を背負わされたのである。

唯一悪の女神が許したのは、人を愛する事であった。

だがそれは、同時に永遠に成就出来ない恋を背負う事でもある。