とはいえ、絵を褒められるというのはなんとも照れくさいもので。


興奮気味に北岡先輩の元へ駆け寄って俺の絵を見せる、鈴森先輩。そうして北岡先輩も、お世辞かは解らないが"上手い"と言う。どんな顔をしていいのかわからなくて、狼狽えた。



「さて、そろそろ最終下校の時間だ」



ちらりと時計を見れば、あと15分程で最終下校時間。もうそんなに時間が経っていたのか。

集中していたから、時間感覚がおかしい。



「後片付けは私たちでやっておくから、桐山くんは帰っていいよ。あ、絵持って帰るよね?丸めるからちょっと待ってて」



俺が返答する間もなく、先輩は慌ただしく教室の隅にあるテープへと小走りで向かう。

その横に置かれた藁半紙で、絵ごと包むように丸めて、テープで止める。それをまた、俺の元へと小走りで持ってきてくれた。



「...輪ゴムじゃないんですね」


「うん。輪ゴムだったらたまに画用紙が破れたりするからね。大事な作品だから」



はい、と俺に丸めたそれを渡す。



「今日はお疲れ様。来てくれてありがとう」


「いえ、こちらこそ」



そう言って、鈴森先輩、そして北岡先輩の顔をもう一度、順に見た。

ふたりに一礼して、美術室を後にした。