うそつき執事の優しいキス

 公立高校で、普通にできるかな? って頭をよぎった予感に、わたしはぶんぶんと首を振った。


 大丈夫、わたしは出来る。


 両手で、頬を挟むようにぱしぱしと叩いて気合いを入れると、メイドの田中さんに今日着る制服を出してもらって、爺を追い出しにかかった。


「さあ、今日から電車通学だし速く着替えて出ないと!
 爺、今日の朝食は、なに?」


「お嬢さまのお好きな、イタリア風トマト仕立てのスープと、舌平目のムニエル、ナッツドレッシングのサラダ、デザートでございます。
 主食はご飯と、パンとスコーンから選べます……が、本当に電車通学なさるおつもりですか!?
 今まで、電車なんて一度もご乗車になったことはございませんでしょう!?」


 なんだか、爺が色々騒いでるけど、気にしない。


 これから普通にやってゆくはずの高校に、ウチの車。


 でっかいリムジン乗りつけてどーするのよ!


 すべては、特別扱い抜きで。


 皆と同じ方向で三年間、『普通に』楽しい高校生活を送ってやるんだから!



 ……ね?