うそつき執事の優しいキス

 宗一郎のお孫さん……宗樹と会ったのは小さい頃の一、二回ぐらいで、最近全然会ってないし。


 一番の目標が『普通の学校で、特別扱いされない』ってことだから、宗樹に何か頼ることなんて、ないはずだ。


 よっぽどの、緊急事態が起こらない限り。


「……で、どーして宗樹と一緒の学校だと問題なの?」


 わたしは安心なのにって首を傾げたら、爺は改めて出て来た涙をぐぃ、と拭いて言った。


「由緒正しい名門、西園寺家のご息女さまが、使用人である私の孫と机を並べるなんて、とんでもございません!
 身分違いもはなはだしく、本当に申し訳なく……っ」


「……身分違いって、今何時代よ?
 しかも、宗樹の方が先に入学したんだから、机を並べることもないわよね。
 むしろ、わたしが先輩って呼ばなくちゃ……」


「ご勘弁くださいませ!」