うそつき執事の優しいキス

 宗樹に迷惑をかけているのは、わかっていたけれど。


 ここで一人になりたくなくて、うるうる見つめていたら、彼はまた、世界の終わりみたいなため息をついた。


「ここまでは、人目が無いから良いけど。
 お嬢さんは、俺と一緒に登校してるのバレたら、ひどい目に合うぜ?」


「……それは、どういうこと?」


 ケンカが好きらしい神無崎さんと同じように、宗樹の顔にも傷がある。


 つまり、彼もケンカをするヒトってことだよね?


「もしかして、宗樹たちは『不良』とかって言われてるヒト?」


 見上げるわたしの視線に、宗樹は目を伏せた。


「さあな。
 でも、そうだとしたら、どうする?」


「信じられない。
 西園寺執事、藤原の……爺のお孫さんなのに……」


 宗樹の第一印象は冷たいヒト、だ。


 意地悪も言うし、からかうこともあるけれど。


 人ごみからわたしを庇ってくれたあたりは、本当はとても頼りになる、優しいヒトだ。


 あ……でも。


 本気で怒った時は、まるで猛獣みたいにすごかったっけ。


 出会ったばかりの『宗樹』がどんなヒトなのか。


 良く判らなくて黙ったわたしを、どう思ったんだろう。


 宗樹は、一瞬揺れて見えた視線を冷たく変えて、言葉を吐き捨てた。