うそつき執事の優しいキス

「そ……宗樹……?」


「……だから、ヒトの話をそう簡単に信じんじゃねーよ、莫~~迦」


「へ?」


「君去津の由来と、ここが昔海だったことは本当。
 身を投げた女の遺体がどっかにひっかかったらしく、結局、見つからなかったこともな。
 だけど、そんな陸が海だったとき、ここの地名がついたときから駅が存在してたと思うか?」


 存在しない駅の出入り口に、遺体なんて引っ掛かるか?


 なんてしみじみ言われて、ようやく間違いに気がついた。


「……あ」


 宗樹に、からかわれた……!


 固まるわたしに、彼は笑う。


「幽霊なんて、いるわきゃねぇって判りゃ、いくらお嬢さんでも、一人で歩いていけるだろう?」


 さぁ、行った、行った~~ なんて。


 手をひらひらさせて、追い出しにかかる宗樹を、わたしは頬をぷうと膨らませてにらんだ。


「……でも、昔。ここら辺で女の人が亡くなったのは、本当なんでしょう?」


「何百年も前に死んだ奴なんざ、さすがに恨み辛みの賞味期限切れじゃねぇ?
 死にたてほやほやと違って、この世にそんなに未練あるとも思えねぇし」


「賞味期限切れって、幽霊を焼きたてほやほやのパンみたいに言わないでよ~~」