うそつき執事の優しいキス

 わたしが曖昧にうなづくと、宗樹は自分の頭をガシガシと掻く。


「……本っ当に、ナニやってるんだろうな、俺。
 今から、西園寺に関わる気なんざ、これっぽっちもなかったはずなのに。
 お嬢さをんガッコの駅まで連れてゆく気になって。
 痴漢に会ったかも、と思ったらこんなにすげー腹立つなんて」


 ……そんな風に独り言みたいに口の中で呟いて。


 扉のガラスに背中をつけ、天井を見上げた宗樹の表情(かお)は、もう何もしゃべりかけるな、って言われているみたいだ。


 だから、声をかけられなかったけれども。


 わたしの方は、申し訳ない気持ちで落ち着かなかった。


 た、確かにさっ。


 本当に独りぼっちは心細かったから、宗樹の通ってる公立高校を狙ったわよ!


 だけど、彼に頼るつもりは無かったのに。


 ど~~してもダメなときに、ちらっと顔を見て、安心できればそれでよかったのに。


 学校着く前に、既にこんなお世話になっちゃって、どうするのよ!


 せっ……せめて、これから先のトラブルは、自分の力でなんとかしなくちゃ!


 宗樹が黙って、わたしがこっそり自分の手を拳に握ってしばらく。


 ようやく、高校のある君去津についたん……だけど。