なんか、さ。


 普段わたしをほったらかしにしたまま、仕事に出かけてばかりの両親の意見を聞くのが嫌になっちゃって、ねぇ。


 幼等部から中等部まで通っていた名門私立学校の高等部にエスカレーター式に上がってゆくのやめちゃった。


 勝手に公立高校を受験し、受かったこの春、今日から通うことになったのが、宗一郎的に、嫌だったみたい。


「宗一郎は、わたしが普通の公立高校に通うのが、そんなに反対なの?」


 寝巻のまま、ベッドの端に腰かけ。


 上目遣いで尋ねれば、宗一郎の横首振りがますますひどくなった。


「滅相もない!
 私(わたくし)はお嬢さまの御祖父さまの代から、この西園寺家にお仕え申し上げておりますが、たかが使用人。
 執事でございます。
 お嬢さまの決定したことに関して、なにも口出しできる立場ではございません……けれども」


 宗一郎は、胸ポケットから白いハンカチを取り出して、目頭に当て……おいおい泣きだした。