うそつき執事の優しいキス

 
 怖いよ……怖いよ……っ!



 でも、頑張らなくちゃ……っ!



 なんとか勇気を振り絞り。


 頑張って椅子から立ち上がってはみたものの。


 歩いてみたら手と足が一緒に出る、ロボットみたいな歩き方になった。


 こっ……これで演奏するのか~~


 華道部の助っ人を手始めに、次々に起こした失敗を、ここでもしたら、どうしよう!


 そんな、不安と緊張で心が押しつぶされそうになった時だった。


 さらり、と風が動いて、黒い影がわたしに向かって覆いかぶさるように抱きしめた。


「宗樹……!」


「ん……」


 宗樹は、そのまま目を細めると、自分の唇で、わたしの唇に触った。


 きゃ~~! キス!?


 こんな所で!?


 確かに、今この楽屋には、誰も居ないけれど!


 わたし達がなかなか舞台の袖に現れないことに心配して、井上さんか、七瀬さん辺りが、今にも覗きに来そうだった。


 きゃ~~ 見られちゃう! 恥ずかしいのはイヤ~!


 なんて、最初はじたばたしていたんだけども、やがて宗樹の暖かい感触に、うっとりと、力が抜けた。