うそつき執事の優しいキス

「もし、Cards soldierの中で、彼氏にするなら、断然、七瀬先輩よね~
 礼儀正しい、常識人だし。
 ダイヤモンド・キングに、クローバー・ジャック、ウチのお兄ちゃんのスペード・エース。そしてハート・クィーンなんて、猛獣に囲まれて平然としてるなんて!
 もしかしてCards soldierの中で、最強なのは、実は、ラッキー・セブン。
 軽音部長の七瀬先輩だったりして!」


 井上さんは、きゃらららって笑うと、七瀬さんの背中をばしばし叩き、当の先輩はむせて、けほけほと咳をした。


「さあ……そろそろ開演の時間だぜ」


 宗樹の冷静至極なその声に、いつもは、先頭に立って大騒ぎをするはずの神無崎さんが、恋の話に参加せずに立ち上がった。


 宗樹の方を一瞬ちらっと見ると、何事もなく、みんな舞台の袖に来いよって手を振る。


 そんな神無崎さんに蔵人さんと、七瀬さんが『ああ!』と答えて席を立ち、二人の後に続いて、井上さんも楽屋を出て行った。


 うぁ~~本当に、始まるんだ~~!


 わたしも、井上さんに続こうと、椅子から立ち上がり……膝が震えてるのに気がついた。


 は……ははは~~


 みんなの莫迦な話を聞いて、大分緊張ほぐれたと思ったんだけどなぁ。


 舞台の向こうに居る苦手な沢山のヒトの気配に、今更ながらに怖気づく。