うそつき執事の優しいキス

 ほんとにもう! わたし、泣きそう~~


 っていうか。


 本当に泣いちゃったわたしを、皆があったかく迎えてくれたんだ。


 そして、なんとか。


 歌詞を乗せた途端、音程を崩した蔵人さんの歌を調整し、今、発表のこの時を迎えてる。


 苦手なひと混みと、今まで感じたことのないプレッシャーに、軽い貧血を起こしたわたしを宗樹は、抱きあげ、椅子に座らせてくれた。


 そして、形の良い眉を寄せて、わたしの顔を覗き込む。


「理紗にCards soldierのステージは辛いか?
 最初は、表に出ずに裏方オンリーの予定だったろう?
 やっぱり、俺がキーボードを担当するから、理紗は休んでる?」


 宗樹の申し出は嬉しかったけれど、わたしは、ううん、と首を振った。


「ダメよ。せっかく蔵人さんのラヴソング、ボーカル&ピアノ曲じゃなく、Cards soldier全員で弾けるようになったのに!
 ドラムスがいなくなったらどーするのよ。
 七瀬さんは、宗樹がドラムス担当の時じゃないと、自信無くてべースが弾けないっていうし!
 わたしが、キーボードから外れると、蔵人さんが音程を外すって、判ったばっかりじゃない」


「ほんとにな~~
 俺が弾いても、そう変わらねぇ気がするのに~~ってか、蔵人のヤツ!
 そもそも音が判らないくせに、よくもまあ、理紗のピアノだけは聞き分けるよな」