うそつき執事の優しいキス

 …………


 そんな、蔵人さんの気持ちをかかえ。


 自分の部屋に戻れば……ピアノの音が聞こえた。


 ちょっと淋しげなクラッシックだけど、わたしがすごく好きな曲だ。


 お風呂に行く時部屋の鍵をかけて来たら、今は執事しか部屋には入れないはずで。


 部屋には、電気もついて無い。


 それでも、外の満月の光で部屋の中は、薄く明るく、ピアノに良く慣れたヒトなら何も問題ないのだろう。


 朝起きる時に聞くのに丁度いい曲に『爺~ いるの?』って呼びながら入ったら、そこにいたのは。


「……宗樹」


 驚いて呟けば、彼はピアノをぱららららんっと鳴らして終わらせ、こっちを見た。


「おかえりなさいませ、お嬢さま」


「えっ……」


 窓から差し込む月光が、宗樹の無表情な顔を半分照らしているのが見える!


 ヤダっ! もう!


 こんな無表情で悲しい宗樹はキライよ!


 神無月さんも、蔵人さんも『想い』を内に隠すって。


 これじゃあ……宗樹も?


 わたしも!?


 そんなの、イヤ!


 わたし、宗樹自身がいる、って言うことよりも、彼の表情に驚いて、部屋の照明を目一杯つけた。


「うぁ、まぶし……!」


 いつから暗い部屋でピアノを弾いてたのかな?


 かなり眩しそうに目をしばたたかせる宗樹は、わたしが見慣れている年相応で表情がくるくる変わる方の彼だった。


「宗~~樹! びっくりした~~!」


「うぁ~~!
 頼むから、風呂上がりで俺に抱きつくな~~!」