うそつき執事の優しいキス

 そう言って、蔵人さんは、わたしを静かに見た。


「僕も大好きなヒトには笑っていてほしい、って」


「蔵人さん……」


「宗樹は理紗のこと本当に好きだ、ね。
 この短い時間で、僕は宗樹が機械から人間に変わってゆくのを見た気がする。
 そして、理紗も宗樹が好きだ、ね。
 これは、僕が特技を使わなくても一目で見て、判る」


 そ……そうかなぁ。


 何だか急にドキドキする言葉に首を傾げれば、蔵人さんは、青い瞳をすっと細めた。


「……だから、聞いて? 理紗。
 僕の言葉を一回、だけ。
 もう。戦う前から負けているってこと、知ってる。
 言っても理紗に迷惑をかけるだけだってこと、も。
 本当は誰にも言わずにいられればかっこいいんだ、けど。
 僕には……想いが溢れそうで。
 何もしないままではフタをするのが無理な……言葉」


 そう言うと、蔵人さんは、月光の中。


 すっ……と音も無く近づくと。


 わたしの右手をそっと取って、両膝をついた。


 そして、わたしの顔をしっかり見つめてささやく。


「理紗。
 僕はあなたのことを愛して、ます」


 ……ああ、そうか。


 ……悲しいね。


 蔵人さんも、神無崎さんも、みんな誰かのコトが好きなのに。


 その想いが届かないことを知ってる。


 その想いに応えることが、出来ないことも判ってる。


 だから、神無崎さんは、その想いを黙って呑み込んで。


 蔵人さんは、僕と付き合って、とは言わない。


 ただ、悲しげに小さくほほ笑むと。


「これからも、もう少しだけ理紗のことを好きでいさせて、ね?」


 って、ささやいた。