うそつき執事の優しいキス

 衝撃的な話に驚いて聞き返せば。


 蔵人さんは、わたしから視線を外して、蒼い月を眺めた。


「……僕がいなければ両親は別れられたのに、って」


「蔵人さん!」


 ……そう言えば、言ってた。


 蔵人さんの耳が壊れた……わけ。


 散々殴られたせいかも、しれないって。


 その時は、夜間バイク走行走行集団『雷威神』の総長さんをやってたって、聞いたばっかりだったから。


 対等な喧嘩をして……と、思ってたけれど……!


 言葉なんて出なくなったわたしに、蔵人さんは、ライオンみたいに笑った。


「でももう大丈夫、だ。
 今では僕の方が、強い。
 爺や伯父兄弟がまとめて殴りに来ても僕が、勝つ」


「蔵人先輩……」


「それに。
 壊れた耳の代わりちょっとした特技も、ある。
 ……言葉に……声にしなく、ても。
 相手がだいたい何考えてるか判る、とか」


 そんな蔵人さんの言葉に『ウソ』って言いかけ……やめた。


 誰にも秘密だった神無崎さんの本命だって、蔵人さんは知っていたし。


 こんな特技があったから、チームワークがあるのか限りなく謎のバイク走行集団、雷威神の総長が出来たんだ。


 蔵人さんの切ない特技に、声も出せずに頷けば。


 本当は、殴られるのがイヤで、ヒトの顔色をうかがってただけの嫌な子どもの印なんだけど、なんて。


 蔵人さんは、ちらっと口の端を持ち上げて言った。