うそつき執事の優しいキス

「蔵人先輩、機械を触るのが好きなんですね」


 このまま黙っていると、顔がゆでダコになりそうで。


 探した話題に、蔵人さんが、心良く乗ってくれた。


「実家が最先端機器を扱ってるSISINだから、ね。
 工場はあまり大きくない、から。
 家中にいろんな部品転がって、る。
 僕もずっと小さい頃、から。
 積み木代わりに配線組んで遊んで、いた」


 蒼い月に照らされて、蔵人さんは、ぽつぽつと自分のことを話し始めた。


 イギリス出身の蔵人さんのお父さん。


 ドイツとか、スイスとかヨーロッパで精密機械の修行したあと、最後に来た日本で、お母さんと出会ったんだって。


 二人は、あっという間に恋に落ちて結婚したけど。


 昔堅気の職人さんのお爺さん以下、お母さん側の親戚のヒトビトは『娘と技術を盗んで逃げた』って今でもお父さんのことを嫌っているらしい。


 そして、どちらの家の手助けも無いまま。


 蔵人さんは機械に囲まれて、独りぼっちで大きくなった……なんてことを。


 わたしも、爺とか、この家で働いてくれているヒトがいた、とはいえ、一人だったから。


 蔵人さんの気持ち……少し判るかもしれなかった。


「小さなころから一人なんて……寂しかったでしょう?」


 そんなわたしの言葉に、蔵人さんはふ、と笑う。


「まあね。
 だけど母方の爺や伯父兄弟が側にいる、時。
 しょっちゅう殴られてた、から。
 僕は一人が良かった、よ」


「……え。
 しょっちゅう殴られてた……って」