うそつき執事の優しいキス

「エロ野郎とは失礼な、ヤツ!
 大好きなヒトとなるべく長くいたいだけ、なのに。
 僕には英国紳士の血が半分流れて、いる。
 恥ずべきことは、その血にかけて絶対、しない」


「な~~にが英国紳士だ、莫迦野郎~~
 確かに半分は英国紳士でも、残りの半分は立派に獣(けだもの)じゃね~~か!
 お前は、絶対。
 月夜に獣に変身してあぉ~~んって鳴くタイプだ」


「なんだと貴様!
 その言葉今すぐ取り、消せ!」


 案の定。


 既にお約束みたいに始まった、神無崎さんと蔵人さんの強烈なじゃれあいに、宗樹は、頭痛をこらえるようにため息をついた。


「……ったく! どいつも、こいつも勝手なことを!
 蔵人が泊るなら、俺も泊るぜ、くそったれ!
 お嬢さんと真麻は、せいぜい自分の部屋にカギをかけて、朝まで誰も入れんなよ!」


 ……とかって言ってたくせに!


 どーせ皆で泊るんだしって、ご飯の後も曲作りの仕上げをやれるだけやってみた。


 冷静に考えると恥ずかしーだの、コイツは気障男のセリフだの、と皆で笑いながら歌詞の候補をいくつか考えたりもした。


 そして、男子陣と別れ、井上さんと一緒に入ったお風呂から出た後だった。


「お休み~~また明日」


 なんて。


 食堂でお風呂上がりのアイスを食べて、井上さんをゲストルームに送って自分の部屋に戻ろうとした時。


 ぐっと照明を落とした廊下の窓から、月を眺める一人を発見したんだ。