うそつき執事の優しいキス

「うぁ、くそ、細け~~」


 神無崎さんは、驚いて呟き、宗樹は『身分をわきまえろなんて、そんなこと。言われなくても判ってるのにな~~』と深々とした、ため息をついた。


「庭までは何回か来たけど、中に入ったのは、お嬢さんに挨拶した一回きりだったからなー。
 あの時は、たださぁ。
 デカくてキレーなお屋敷だ~~ぐらいしか、判んなかった。
 でも今見ると、そこらにフツーに転がってるモノの価値が判って眩暈(めまい)しそ~だぜ。
 例えば、真麻。
 お前が触ってるガラスの小瓶。絶対『ガレ』で多分値段は三百万円ぐらいだ」


「えっ!」


 今まで『かわいい』を連発し、気軽にひょいと持ち上げていた井上さんは、ガラス器を取り落としそうになって、慌てて棚に戻した。


「他にも、蔵人が……」


 宗樹に言われ。


 今まさに、壁に掛かった宝剣に手を伸ばそうとしていた蔵人さんが、びっくぅと飛び上がり、手をひっこめた。


「わ~~良いって良いって、部屋のコトは気にしなくて!
 それより曲よ!
 今日は、皆で作曲しに来たんだから、やろうよ!」


 もう、これ以上『フツーと違う所』を連発して欲しく無くて。


 わたしは、慌てて宗樹の背中を押した。