うそつき執事の優しいキス

 楽しそうにはしゃぐ、井上さんを見ながら蔵人さんは首を傾げた。


「『ほとんど』ってことは、やっぱり誰か見に来ることってある、のか?」


「ま、さっきの爺さんが時々様子を見には来るんじゃね? 執事だし」


 わたしの代わりに神無崎さんが答えて、肩をすくめる。


「でも、よっぽど変なコトを始めない限り、邪魔はしねーよ。
 西園寺の執事だろ?
 相当優秀なはずだろーから、空気だと思ってほっとけば勝手に仕事するんじゃねぇの?」


 なんて、蔵人さんに説明してる神無崎さんの話を聞きながら、宗樹を見てぎょっとする。


「大丈夫、宗樹? 顔色悪いけど……」


「ああ、大丈夫。
 ちょっと……その、緊張してるだけだから」


「宗樹が、緊張!」


 神無崎さんが驚いて叫べば、宗樹はうんざりと、言った。


「うるせぇな! 俺にだって色々あんだよ!」


「でも、良かったじゃない。
 爺にも、特に言われなかったし。
 みんなと同じように『さま』つきで呼ばれて『歓迎する』って言われたし?」


 わたしが、そう言うと、宗樹はため息をついた。


「お嬢さんと他の『ご学友のみなさま』のご迷~惑にならないようにしてるだけだろ。
 あのクソジジィ!
 挨拶だって、みろ!
 西園寺の正式な作法にのっとるとだな、本当は裕也の次に俺の名前が来るはずなんだ。
 なのに。
 あの順番は俺に向かって『身分をわきまえ、控えろ』って言っている」