うそつき執事の優しいキス

「ちょっ! 待っ……!
 ここって『西園寺屋敷』じゃない、か!」


 そ……そんなに叫ばなくても……蔵人さん。


「だから、わたしの名字『西園寺』でしょうが」


「でもっ! ここら辺って『西園寺』って名字がやたらめったら多いじゃない!
 西園寺さんのご先祖サマも『本家』との縁を~~とかでつけた『なんちゃって西園寺』だと思ってたのに!」


 なんて、そこまで井上さんがしゃべって、それから二人の声がハモった。


「なんで公立高校になんて、来た?」


「どうして、君去津高に入学したの!?」


 はははは……はは。


 なんでだったかなぁ~~


 ああ、地味~~で、フツーなわたしの生活~~


 たった一日で潰(つい)えたささやかな野望に思いをはせて、しょぼん、と肩を落とした時だった。


 西園寺家正門が仰々しく開いて、ウチの執事長、藤原宗一郎が迎えに出た。


「おかえりなさいませ、お嬢さま。
 そして、ようこそ西園寺家にお越しくださいました。
 神無崎裕也さま。蔵人・ライアンハートさま。藤原宗樹さま。井上真麻さま。
 わたくしは、当家に仕える執事長、藤原宗一郎と申します。
 皆さまのことは、お嬢様のご学友の方々と承ってございます。どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ」