うそつき執事の優しいキス

 ………



「ライアンハート先輩が……歌うの?」


 わたしの話に、マジで? って続きそうな勢いで、井上さんは目を丸くした。


 良く考えれば、Cards soldierとも軽音部とも無関係なわたしと、蔵人さんが、第三音楽室を使うんだもん。


 井上さんにあれやこれや説明してたら、まず、最初にビックリされちゃった。


「たっ……確かにさ、ライアンハート先輩、地の声『は』ステキよね」


『は』ってなによ『は』って~~


 何か、ものすごーーく引っかかる言い方で、井上さんは言った。


「ライアンハート先輩、一時期『雷威神』っていう暴走族の総長みたいなことやってたじゃない?
 本当は、雷威神って、一般生徒の夜間バイク走行集団だし。
 総長決めるのも喧嘩とかじゃなく、投票で平和的に決まったんだけどさ。
『総長』っていう言葉自体がカッコイイ! とかでさ。
 ライアンハート先輩の総長就任記念に、ウチのお兄ちゃんが曲を作ったんだよね。
 まぁ、せいぜいお兄ちゃんが作るヤツだし、そう、難しい曲じゃないはずなのに~~」


 その曲をライアンハート先輩がすごく気に入ってくれたのは、良いけれど。


 先輩の歌うデモテープを聞いた途端、本気で眩暈を起こしかけた、って井上さんは、言った。


『未来のネコ型ロボットが活躍する話に出てくる、歌好きなガキ大将を思い出した』って、ヒドくない?


 でも、こんなことは、言われ慣れているらしく。


 蔵人さんは困った天使の顔のまま。こめかみあたりをぽりぽり掻いている。