うそつき執事の優しいキス

 嫌な予感、するなぁ……と、思って見ていたら。


 うぁ……まてまてまてまって!


 蔵人さん、カギのついた取っ手を蹴り壊す気でいない!?


 長々しい足を、音も無く。すぅっと上げた感じが、どっかの一流武術家さんの構えみたいで、コワいんですけどっ!


 いや、確かに一刻も早くピアノ使いたいのは山々なんですが、何もそこまでしなくても……!


「蔵人先輩、ちょっと待っ……」


「ライアンハート先輩、ストップ! ストップ!
 音楽室使うなら、カギ、持ってますから!」


 わたしが止める声と、重なるようにして蔵人さんを止めたのは……


「井上さん!」


「真麻(まあさ)。君軽音部に入った、のか」


 え、蔵人さん、井上さんを知ってるの!?


 一昨日君去津高に来て初めての『オトモダチ』。


 昨日、ちょっとしたズルでCards soldierのマネージャーになった、って言ってた、わたしと同じクラスの井上真麻がそこにいたんだ。


 相変わらず、みつあみの髪を横にピン、と伸ばした井上さんは、小柄の身体をピンと伸ばし、蔵人さんを恐れることなく、ぱたぱたぱたっと近づいた。


「もう! ライアンハート先輩!
 あなたは、ダイヤモンド・キングな神無崎先輩に比べれば、全くって言うぐらい喧嘩を売らないのに!
 変なところで乱暴だから、しょっちゅう停学になったり、最凶、最悪伝説の尾ひれがつくんです!」