うそつき執事の優しいキス

 昨日、神無崎さんと宗樹の二人がかりでもてこずった集団が、あっと言う間に蔵人さんのために道を開ける。


 二人でいる時は、はにかんで笑う困った顔の天使なのに、今は蔵人さんの銀に近い金髪が、ライオンの鬣(たてがみ)に見えるんですが。


 生徒会長でもある神無崎さんが、君去津高の王さまなら、彼は『魔王』だ。


 全く音をさせずに、すぅ、と滑るように歩く。


 そんな蔵人さんの周りから面白いように、人が後さずっていなくなり……あっという間に、わたしの目の前に、来た。


 そして、そのまま黙ってる蔵人さんの姿が、なんとなく困っているように見える。


 そっか。


 蔵人さん、Cards soldierと真逆な感じで有名だから、下手に声をかけて、わたしの連れだと思われると、迷惑になると思ってるんだ。


 そ、そりゃぁねっ!


 この高校に来た理由『お姫さま扱いされないフツーの生活』にあこがれたんだけど。


 西園寺の『経済力』って言うヤツ、直接前に出さなくてもたった三日目で、この騒ぎなんだもん!


 神無崎さんはわたしを預かった、って言うし!


 宗樹と仲好しだって言うことだって、多分時間の問題でバレるだろう。


 なのに、今更『フツー』でいたいと思っても無理だし。


 蔵人さんと知り合いだから、オトモダチになれない、っていうヒトとも付き合いたくない。


 それに何より、わたし、今、もっと大切なコトがあるような気がする!