うそつき執事の優しいキス

「おい、待てよ!」


 うぁ……怒ってる!


 やっぱり、わたし、おせっかいだったかな?


 いきなり不機嫌になった声に、思わずびくっと飛びあがったら、彼の声が少しだけ優しくなった。


「おい、てめー。前にどっかで会ったっけ?」


「い……いいえ、ちっとも!」


「じゃあ、神無崎 裕也(かんなざき ゆうや)って名前に聞き覚えは?」


「……ありません。完全に初対面……だと思います」


「じゃあ、オレが誰かも知らないで、こんなことを……ハンカチを貸してくれたのか?」


「……まぁ」


 ……本当に初対面だし、純粋に見てられなかったから、だけど。


『オレが誰かも、知らないで』ってなんか、とっても自信満々な言い草……だね?


 傷の無い、無事な方の顔から察するに、本当はかなりイケメンそうだ。


 神無崎 裕也さん、かぁ。


 もしかして、実は、有名な俳優か、モデルか、歌手か……そういったお仕事のヒトなのかな?


 とはいえ、まったく誰も思いつかず、見覚えもなく。


 首を傾げれば、彼は突然げらげらげら~~と笑いだし。


 次の瞬間、痛ててて! と顔を盛大に歪ませた。


「あ……あの、大丈夫……ですか?」