うそつき執事の優しいキス

 ち~が~う~


 宗樹は………宗樹は。


 ただ……『執事』の真似事をしている、だけだ……


 そう思った時だった。


 わたしの心臓が、どきんっと急に鳴ったかと思うと、そのままきゅーっと締めつけられるような気がした。


『これ』……初めての、この感じをどう表現したらいいのか判らない。


 けれど……あえて言うなら。


 悲しい……? やるせない?


 焦ってドキドキする……?


 ううん。


『切ない』


 そう、そんな感じ。


 宗樹がなんやかやとわたしの世話を焼いてくれるのは、もちろん。


 西園寺家の執事長たる爺の孫、だからだ。


 わたしは、別に宗樹の彼女でも……本当のコトを言うと、幼なじみでもないって言うのに。


 そんなコト、当たり前に判っているはずなのに。


 ……なんで、悲しいなって思うんだろう。


 切ないな、って感じるんだろう……?


 はじめて感じるこの想いに、胸の音がうるさくて……痛い。


 心臓が破裂するかと思うほどの切なさに、向かい合うのが怖くて……イヤで。


 わたし、無理やり声を出した。


「……そう言えば、井上さん……神無崎さん達と……一緒だったよね?
 無事に、軽音部に入れたの……?」