うそつき執事の優しいキス

「……え、壊れてるって!? 一体どういう……こと?」


 言ってるコトが良く判らない。


 聞き返せば、蔵人さんは自分の耳を指でつついた。


「子どもの頃から散々殴られてたせい、か。
 それとも別に原因あるのかは、謎。
 ただ、僕はこの特別な補聴器無いと。
 音がほとんど聞こえ、ない」


 補聴器って……あ、耳のピアス!


 昨日、初めて会った時からつけてたやつだ!


 あんまり目立たないので、今日はスルーしてたけど、良く見れば確かに。


 輝く金属片が耳の穴により近くついてる。


 ごく普通の公立高校で、蔵人さんの金髪に、ピアスが許されているワケは……


 髪は自毛。ピアスは、聞こえづらい音を『聞く』コトを助ける機械だからだったんだ。


 視力が弱い人がメガネをかけて学校へ行っても許されるように、蔵人さんのピアスも許される。


「補聴器、人の会話は問題無く聞こえる、けど。
 音程を取れるほど高性能じゃ、ない」


 だから、歌えないんだ、と蔵人さんは言った。


「じゃあ、もっと高性能な器械を使えば良いじゃないですか!」


 今、どんなヤツを使っているか判らないけれど、もっと良いモノにすれば変わるかもしれない。


 そう言ったら、蔵人さんは、困ったように笑った。