うそつき執事の優しいキス

「ねぇ、宗樹。
 これってもしかして…………」


「もしかして?」


「軽音部の朝練習のためだとか?」


「だぁぁぁぁああ、そうだよ!
 朝練だよ。軽音の!!
 あんたが心配だったからじゃ、絶~~対ねぇんだからなっ!!!」


 あ、固まってた宗樹、一気に解凍した~~


 なんだか顔が赤い気がするけど、気のせいだったかな?


 首をかしげるわたしを、宗樹は早くいけ、って手を振って駅構内から追いだしにかかる。


 もう!


 そんなに急に不機嫌にならなくったっていいじゃないの!


 どーしても、宗樹の考えていることが判らずに。


 今日も一人で学校の敷地に通じる桜の坂の並木道を走りぬけようとした。


 すると、海に出る寸前。


 海と桜を分ける最後の木に、誰かがもたれかかるように立っているのが見えた。


 着ている服は君去津の制服じゃなくてもその金に輝く髪は、見間違えようもなく。


「蔵人(くらうど)・ライアンハート……先輩!」


 思わずそう、叫んで近づいたわたしに気づいてくれたんだ。


 でも、どんな表情をしたら良いのか迷っているみたい。


 蔵人さんは困って、結局、はにかむように「やあ」と笑った。


「今日は……私服なんですね」


 制服より似合う黒い服に落ち着かなくて、そう言ったら、蔵人さんは肩をすくめた。


「停学くらった、から」


「停学って! もしかして、昨日の騒ぎで!?」