わたしが頬がぷぅ、と膨らませば、宗樹は困ってこめかみあたりをぽりぽり掻いた。


「……しかたねぇ。君去津駅までは送ってやらぁ」


「はい、十分でございます~~」


 宗樹は西園寺家の敏腕執事な爺の孫って立場の他に、君去津高校のバンドCards soldier(カーズ・ソルジャー)の一員、クローバー・ジャックの顔を持ってる。


 ものすごい人気の彼と一緒に学校まで登校した日には、わたしの目指した普通の生活って言うヤツが完全崩壊するに決まってるんだ。


 きっ……君去津駅は、朝から幽霊出そうな迫力満点の駅だけど!


 お化けより怖い人ごみさえなんとかなれば、フツ~~に通学ぐらい出来るもんねっ!


 そう思っている側から、また人に流されそうになり……


「うぁ、一瞬たりとも目、離せねぇ!」


 小さくつぶやいた宗樹がまた、わたしの肩を抱くようにして人ごみを避けてくれた。


「お……お世話になります」


「ふん」


 宗樹は、そっぽを向いたけど、それで却って彼のすっと伸びる首筋と鎖骨の辺りが近くで見えて、ドキッとする。


 もし、こんな人ごみから、守ってくれるんじゃなかったら。


 こ……恋人同士って思われても良いぐらいに、近い~~