「やっぱさぁ、お嬢さん。
 電車通学だけは、止めた方がいいんじゃねぇの?」


 宗樹にしみじみ言われて、わたしは肩を落とした。


 しょぼん。


 あ~~あ。




 あこがれの公立高校生活、二日目。


 相変わらず、見事なピアノ演奏でわたしを起こしに来た爺には泣かれたけど、もう大丈夫だと思った。


 一人でもちゃんと電車が乗れるようにスイカを購入し。


 コックさんにお昼のお弁当も作ってもらい。


 念のために現金も用意して、今日は登校バッチリ!


 ……のはずだったのに~~


 たった二日目じゃ、ヒトの多さにはちっっとも慣れず、やっぱり今日も流される。


 道行く人に押され、あ~れ~~なんて、心の中で叫びながら、目を蚊取り線香のようにくるくる回している所で、ひょいと手首を取られた。


 そして今日、世界が終わるかと思うぐらいの、大きなため息が聞こえたんだ。


「お嬢さん、あんた真面目にガッコへ行こうと思ってる?」


「もちろん~~頑張ってます~~」


 あきれ果てた宗樹の目の前に、決意の印の握り拳を出してみたんだけど。


 宗樹は、あっさりぱーの形を出してわたしの拳骨を握りこんでしまった。


「お嬢さんの、負け」


「じゃんけんじゃないもん!」