「お屋敷の御用があるのに、自分の家が遠くちゃ仕事にならねぇだろう?
 住所は別にあるけど、ここら一帯は通称『西園寺地区』って呼ばれてる。
 お屋敷に直接住みこんでねぇヤツや、西園寺に勤めているヤツのいる家族は大体ココに住んでいる」


「ふうん」


「その中で、地区の自治管理を任されているのが、俺ん家、藤原家。
 昔から、女衆の仕事だ。
 そして、男衆はお屋敷で働き、そんな俺達の上に西園寺が君臨してる……今でも」


「君臨って、また大げさな……でも、本当に?」


「ずーっとずーっと長く続いていることだ。
 日本に身分制度なんてモノが無くなって、これもまた長く経ったけど。
 今までも、これから先もウチと西園寺家の関係だけは、きっと永遠に変わらない。
 なのに、この藤原一族の末裔である俺だけが、西園寺と対等だなんて勘違いしちゃいけねぇんだよ」
 

 わたし、今まで勉強やら、習い事やら。学校のお友達と付き合うのが一生懸命で、自分たちの住んでる地域がどんなふうになってるのか、知らなかった。


 わたしは、宗樹の言っていることがちゃんと理解できずに、あとで散々泣く羽目になったけど。


 宗樹はもう、先を見通していたように、窓の外を見ながらうつむいたんだ。


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