うそつき執事の優しいキス

「……申し訳ございません。
 では、お嬢さまをお願いいたします」


 ……って、宗樹、やっぱり車に乗る気無いでしょう!?


 わたしは、ぷぅと頬を膨らませると、えい、とそのまま宗樹を突き飛ばしちゃった。


「うぁぁあ!」


 取り澄ました表情のまま、わたしを車の後部座席に乗せるために振りかえりかけた宗樹は、驚いた声をあげる。


 丁度開いていた車の扉の中へ、すぽんっ、と面白いように入っちゃったんだもん。


 そりゃぁ、ビックリするかもねっ!


 わたしは、地面に置きっぱなしの宗樹の荷物を手に取ると、そのまま宗樹がひっくりかえってる車の後部座席に乗り込み、自分の手で扉を閉め、ついでにロックする。


 そして、やっぱりビックリ顔で、呆然としている運転手さんに声をかけた。


「田中さん! お家に帰るから、今すぐ車を出して!」


「はっ、はい!」


「そうそう、家に着く前に『先輩』送るから!
 爺の……じゃなかった、藤原さん家って判るわよね?
 寄ってくれる!?」


「莫迦やろ~~!
 ふざけんな! 俺は電車で!」


 よっぽと驚いたらしい。


 完璧につけてたはずの執事の仮面をあっさり壊し。


 帰る! って騒ぐ宗樹に、わたしはぼすっと彼の荷物を押しつけた。