うそつき執事の優しいキス

「……あったかい。
 ありがとう」


「ふん」


 そんな表情(かお)して横向けば、宗樹自身が小学生にも見えちゃうね。


 オトナだか、子供だか、良く判らない不思議なヒトで時々意地悪言うけど。


 このヒトきっと、ホントは優しくてあたたかい。


「……それで、この状況でにこにこ笑ってるし」


 俺のミスなんだからもっと怒れよ、なんて宗樹は言ってるけれど、わたしだって、しっかり寝てたし、知らないもん。


 別に宗樹と一緒なら、こんな、ヒトの全く居ない。


 どことも知らない夜の駅だって、怖くない。


「今まで、あんまり夜出歩いたことないから、なんか楽しい」


「莫~~迦」


 車を待つ時間があったから、空を見上げれば、お月さまが光っていて。


 薄暗いとはいえ駅の光を越えても、輝く星がある。


 こんな当たり前の風景だって、時間通りにぴしっとやって来る車に乗って移動してたら、見えなかったもの。


 だから、電車の中で寝過して、時間をロスしたかなって思うよりも、迎えの車が来たときは、少し残念だな、って思ったくらいだ。


 やがて、さびれた駅には場違いのでっかい車が音も無く入って来て、宗樹の雰囲気が変わった。


 後部座席を開ける運転手さんに、一人前の執事の顔した宗樹がきちっと会釈する。