うそつき執事の優しいキス

 最低だ、なんて。


 うつむく宗樹の袖を、わたしは引っ張った。


「そうじゃない。
 最低、なんて言っちゃだめだよ」


 事故が起きた時、全員で出て行ったら、雷威神だけじゃなく、Cards soldierだって完全解散、だったかもしれない。


 きっと、スペード・エースはCards soldierに残ってて欲しかったんだ。


 それも、なるべく良い形で。


 スペード・エースが歌っていた時がどんなだかなんて、もちろん知らないけれど、今のCards soldierはとてもバランスが悪い。


 それは、何の前情報もなく見た上、軽音バンドは全く素人のわたしにだって判るくらいなんだから。


「大事なヒトを想っていつまでも待っているって、すごくカッコいいけどさ。
 それって『現実から目をそむけて、ただ止まっているだけ』じゃないってきちんと言えるかな……?
 誰が見ても、今のままじゃ絶対ダメで。
 そして、待っている相手本人が『変われ』って言ってくれるんでしょう?
 それなのに変わらないのは、個人的に前を見るのが怖いから、色々理由をくっつけて進まないだけ、とか……って、言わない?」