うそつき執事の優しいキス

 音楽を演奏するには、時間を合わせて練習する必要がある。


 コレはこれで面倒臭いけれど、その分。相手を知ることができたって宗樹は言った。


「バンド活動、楽しそうだったね」


「ああ、楽しいぜ!!
 バイク乗って海岸走るのと同じくらいか、それ以上に!
 仲間と一つの音楽を作って、全員の息がぴたっと合った時は、ここが俺の居場所かも、って思えるくらいステキだ」


 部活紹介の様子を思い出して頷けば、宗樹は嬉しそうに笑った。


 「でも、最初のCards soldierでは、実は楽器扱えるのが俺と裕也だけだったんだ。
 ヴォーカル担当のスペード・エースもPCソフトで作曲するのが精いっぱいだしな。
 一番音楽活動をやりたがっていた蔵人が音痴で、どんな楽器も歌も担当できずに、軌道に乗るまで大変だった」


「ええっと……やっぱり、蔵人さんって音痴なの?」


 海岸でものすごくいい声を出していたから、本人の謙遜か、何かの間違いだと思ったのに。


 信じられないって聞いたら、宗樹は「それはもう、破壊的に」と言って肩をすくめた。


「蔵人のしゃべり方、独特だろう?
 アレ、別にあいつが外人の血が混じってるから、日本語の発音が得意じゃない、って言うわけじゃねぇんだよ。
 普通会話するにも、ヒトは無意識に音程を取っているもんだけど、そんな些細な音の高低差も蔵人には判らねぇ」