うそつき執事の優しいキス

「えっ!
 だって、蔵人さんはともかく、神無崎さんて、オトモダチでしょう?
 どうして殴られるの!?
 もしかして、いじめ……」


「ねぇな、それだけは」


 ビックリして聞き返したら、宗樹は肩をすくめた。


「慌てんな。
 別に二人がかりで、俺を一方的にやったわけでもねぇ。
 やられた分は、しっかり殴り返しておいたし。
 本気(マジ)で喧嘩した(やりあった)んでもねえよ。
 こんなモノ!
 特に意味もねぇ、何時もやってるあいさつ代わりみたいなもんだ。
 ……でも、まあ。今回に限って理由をつければ、音楽の方向性をカタっているうちに熱くなり過ぎた、ってヤツ?」


「あ……もしかして、抜けたスペード・エースの代わりを探すっていう……」


「そう。その話がこじれてな~~」


 宗樹がうなづいた時、丁度わたし達が乗る電車がやって来た。


 彼は、当たり前のようにわたしの手を取って、電車に乗り込むと。空いている電車の奥にわたしを座らせ、自分は、扉側に陣取った。


 二人で隣同士に座ったから、宗樹の顔今がまでで一番、近い。


 そして、その口元にある傷も、また近づいた。


 キレイで、カッコ良くて……痛々しい。


 そんな宗樹から目を離すことなんて、出来なくて。


 じっと見つめていると、彼は困ったように笑った。