「総司、早く……!」
空いた手で総司の手を握ろうとするけど、その体はするりとすり抜けてしまった。
「嫌です。あなたが投降するというのなら、俺も一緒に行きます」
「なっ、総司……!それなら、あたしも一緒に……」
副長の手を振り払おうとすると、局長の大きな怒号が響いた。
「馬鹿もの!」
びりびりと空気が震え、金縛りにあったように言葉を失ってしまう。
すると、こわばったあたしたちに、局長はふと笑いかけた。
「お前には、俺よりも大切にしなければならないものがあるだろう?
命をかけて守りたいと願った彼女を、その命がある限り……何よりも、大切にしてやれ。
それがお前のすべきことだ」
それって、あたしのこと?
思い出すのは、家茂公に総司があたしをくださいと直談判しに来た日のこと。
あのとき、近藤先生は総司の願いを叶えてくれと、泣きながら土下座してくれた。
「近藤先生……」
「早く、時間を無駄にするな。行け!」
総司はまだ決心がつきかねているようだったけど、なんとか足を進める。
そのとき、長岡屋の戸をとんとんとたたく音がした。
敵が、やってきたのかもしれない。
「楓くん、総司をよろしくな!」
「局長……!」



