幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「総司、早く……!」


空いた手で総司の手を握ろうとするけど、その体はするりとすり抜けてしまった。


「嫌です。あなたが投降するというのなら、俺も一緒に行きます」

「なっ、総司……!それなら、あたしも一緒に……」


副長の手を振り払おうとすると、局長の大きな怒号が響いた。


「馬鹿もの!」


びりびりと空気が震え、金縛りにあったように言葉を失ってしまう。

すると、こわばったあたしたちに、局長はふと笑いかけた。


「お前には、俺よりも大切にしなければならないものがあるだろう?

命をかけて守りたいと願った彼女を、その命がある限り……何よりも、大切にしてやれ。
それがお前のすべきことだ」


それって、あたしのこと?


思い出すのは、家茂公に総司があたしをくださいと直談判しに来た日のこと。


あのとき、近藤先生は総司の願いを叶えてくれと、泣きながら土下座してくれた。


「近藤先生……」

「早く、時間を無駄にするな。行け!」


総司はまだ決心がつきかねているようだったけど、なんとか足を進める。


そのとき、長岡屋の戸をとんとんとたたく音がした。

敵が、やってきたのかもしれない。


「楓くん、総司をよろしくな!」

「局長……!」