おとりになるだなんて。
局長ともあろう人が、あたしたちを逃がすために?
あまりにも意外な提案に、副長も目を丸くする。
「私がお上にいただいた大久保大和という名を名乗って投降しよう。
少しは時間がかせげるはずだ」
「そんなこと、できるわけありません!全員で逃げましょう」
総司が声を荒げる。
「総司……すまない」
局長は首を縦にふらず、ただ総司を見つめて謝った。
「あのとき、お前の言葉に耳を傾けていればなあ……。無駄に散る命の重さを、私はちっともわかっていなかったよ」
勝沼の戦いのことを言っているんだろう。
局長の瞳に、後悔の色がにじみ出ていた。
「俺一人が投降すれば、流山にいる人たちを戦火に巻き込まなくてすむ。
隊士たちも守ることができる。それが私が新撰組局長としてするべきことだ」
「先生……しかし、あなたに何かあったら……」
「大丈夫、なんとかなるさ!さあ、行け!」
局長はついに立ち上がり、総司と副長の背中を叩いた。
「……必ず、生きてまた会おう。行くぞ、ぼおっとするな」
副長はあきらめたようにため息をつくと、そう言ってあたしの手を引く。



