幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



おとりになるだなんて。

局長ともあろう人が、あたしたちを逃がすために?

あまりにも意外な提案に、副長も目を丸くする。


「私がお上にいただいた大久保大和という名を名乗って投降しよう。
少しは時間がかせげるはずだ」


「そんなこと、できるわけありません!全員で逃げましょう」


総司が声を荒げる。


「総司……すまない」


局長は首を縦にふらず、ただ総司を見つめて謝った。


「あのとき、お前の言葉に耳を傾けていればなあ……。無駄に散る命の重さを、私はちっともわかっていなかったよ」


勝沼の戦いのことを言っているんだろう。

局長の瞳に、後悔の色がにじみ出ていた。


「俺一人が投降すれば、流山にいる人たちを戦火に巻き込まなくてすむ。

隊士たちも守ることができる。それが私が新撰組局長としてするべきことだ」


「先生……しかし、あなたに何かあったら……」


「大丈夫、なんとかなるさ!さあ、行け!」


局長はついに立ち上がり、総司と副長の背中を叩いた。


「……必ず、生きてまた会おう。行くぞ、ぼおっとするな」


副長はあきらめたようにため息をつくと、そう言ってあたしの手を引く。