幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



しかし、この着陣翌日。


兵士が調練に出かけ、局長と副長以外には数人しか残っていない長岡屋に、急な知らせが入った。


格子の間から斉藤先生の式神が入ってきて、副長がそれを受け取ると、ただの紙に変わる。


調練指導をしているはずの斉藤先生から、何の知らせだろう?


無言で紙を見ていた副長の顔が、険しい色に変わっていく。


「くそっ……!近藤さん、すぐにここを離れる準備をしてくれ。敵に囲まれている」


その瞬間、局長の顔にも、緊張が走った。


そんな……こんなに早く敵に気づかれてしまうなんて。


「敵はかなりの数らしい。総司、楓、平助。なんとしても近藤さんを守って逃げきるぞ」


「はい!」


てきぱきと指示をする副長に返事をし、あたしたちは立ち上がる。

しかし、局長はその場で固まったまま動かない。


「どうしたんだ、近藤さん」


副長が局長の腕をひっぱろうと手を伸ばす。けれど。


「トシ……私がおとりになる。その間に、お前は先に逃げろ。会津に向かえ」

「なん……だと?」

「鳥羽伏見の戦いを経験したお前こそ、今の新撰組を率いるべきだ」

「何言ってんだよ……」