今にも殴りかかりそうな剣幕で、永倉先生はまくしたてた。
もともと農民だった近藤局長が、たくさんの苦労をしてここまでやってきたことは皆知っている。
けれど、武士の位より、なにより大切なものに、あたしたちは気づいてしまったんだ。
身近な人が儚く散っていく悲しみを、あたしたちは鳥羽伏見で知ってしまった。
剣と剣の戦いをしていた時代は終わった。
旧式の戦いしか知らないあたしたちに待つのは、新政府軍による虐殺だけだ。
「援軍が来る。それまで持ちこたえれば勝てる」
局長は永倉先生を見つめると、力任せに腕を振り払い、陣営から出て行ってしまった。
「総司……ごめんな、無理させて」
泣きそうな顔で謝る平助くん。
「お前のせいじゃねえよ」
口元をぬぐう総司も、泣きそうな顔をしていた。
……その夜は説得をあきらめ、すぐに休むことにした。
総司はあたしの血を少し舐めると、少し青いままの顔色で、眠りについた。
隣にいるあたしの手を、にぎったまま。



