「……ここにいる皆、自分の命が惜しくて敵前逃亡を図っているわけじゃありません」
「なに?」
「俺たちは、鳥羽伏見で多くの仲間が何もできずに銃弾の雨に撃たれて死んでいくのを目の当たりにしました。
残った隊士たちには、もうあんな死に方をさせたくない。
あの山崎監察でさえ、銃弾にやられて亡くなったんです」
低い声が、静かに陣営の中に響く。
近藤局長は、苦々しい顔でそれを聞いていた。
亡くなった隊士たちのことを思い出してくれたんだろうか。
「せめて、土方さんが戻ってくるまでは、無謀な戦いをなさいませんよう……」
言葉の途中で、ぐ、と息がつまる音がした。
みんながハッとした顔をすると同時、激しくせき込む総司。
「ごほっ、がっ、ごほ、ごほ……!」
背を折り曲げて咳き込むと、地面にとろりと血が糸を引いて落ちる。
「総司……!」
銀月さんの背中に揺られただけでも、体に負担がかかったんだ。
支えるように寄り添うと、総司はぜえぜえと息をつき、近藤局長を見つめなおす。



