「大変だ、総司」
平助くんはいつもの笑顔ではなく、眉を寄せて緊張した顔をしていた。
「どうした?何かあったのか」
「どうしたもこうしたも、先に新政府軍に甲府城をとられちゃったんだよ!」
「なに?」
平助くんが言うには、三日前に出発した甲陽鎮撫隊は70人と少しだった。
そこで浅草の幕臣、弾左衛門から百名の配下に協力してもらうこととなる。
出発翌日には土方副長の実家がある日野を訪ね、副長の義兄・佐藤彦五郎の集めた農兵・春日隊も甲陽鎮撫隊に参加、総勢二百余名となった。
「寄せ集めの軍隊で、不安はあったけど、そこまでは良かったんだ。
問題はそこからだよ」
農民から大名にまで出世した局長は、地元のどこにいっても大人気。
人の良い性格だから、集まってくる農民たちを無下にもできず、催される歓迎の宴に真面目に顔を出してしまう。
「で、やっと行軍が始まったと思ったら、道に雪は残ってるわ雨は降るわで、思うように進めなくてさ」
険しい道のりの行軍に、寄せ集めの兵は脱落者が相次いだ。
結局残っているのはわずか120余名。
そうしてもたもたしていたら、約二千人の新政府軍に甲府城が落とされてしまったという知らせが先発隊から入ったらしい。



