『記憶を失う、か……』
命をとるか、人としての誇りを取るか。
総司はすぐには決断せず、それから養生しながらずっと考え込んでいるようだった。
完全なもののけとなっても、平助くんのように新撰組と戦うこともできるだろう。
けれど、今までの記憶をなくしてしまうことにはどうしても抵抗があるみたい。
そりゃあ、そうだよね……大好きな近藤局長や、土方副長、新撰組のみんなのことを忘れるってことは、総司にとって今まで生きてきた証を全部捨ててしまうようなものだもの。
『いっそのこと死んじまえば、記憶を保ったまま平助みたいに他のもののけと同化できるんじゃねえか?』
『バカなことを言わないでください。
高貴なもののけの血筋である貴方が死んでしまったとて、その魂が同化できる体が簡単に見つかるとお思いか。
それができれば、先代頭領だってもっと生き延びられたものを』
どうやら、総司はお父さんと同じで貴重な血筋のために、その他大勢のもののけとの同化は難しいらしい。
『ちっ、めんどくせえなあ』
『ほんと、ややこしいねえ……』
もののけの世界って、人の理解をはるかに超えているかと思えば、できないこともたくさんあって……頭を整理するのに精いっぱいだった。



