幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



──あのあとすぐ、あたしたちはこの森に着いた。


銀月さんたち、もののけたちが住む森。

総司のお父さんの故郷だ。


気を失ったままの総司に、とりあえずあたしの血を飲ませると、翌日に目を覚ました。

人間の体に限界がきているということ、完全な狼のもののけになれば助かるということを聞いた総司は、銀月さんに質問した。


『完全な狼って、どうやってなるんだ?完全な人間にはなれないのか?』


銀月さんは落ち着いて答えた。


『特殊な妖術で、頭領の魂から、人として生きてきた記憶を切り離します。純粋なもののけの魂となれば、体も純粋な狼になれる』


そんな……人として生きてきた記憶をなくしてしまうってことは、新撰組やあたしのことも全部忘れちゃうってこと?


不安になるあたしの肩を抱いたまま、総司は冷静に聞き返す。


『反対の事をして、純粋な人間にはなれないのか』

『……できるかもしれませんが、その場合、結局そのお体は長くはもたないでしょう』


狼の体となっても、最初は弱っているだろうと銀月さんは推測する。

しかし、もののけは人間とは比べ物にならない生命力と寿命を持っている。

だから狼となって養生すれば、生き延びられるということだ。