隠密行動に優れているといえば、山崎監察だったけど……。
彼は、鳥羽伏見の戦いで受けた銃弾の傷が元で、船旅の途中で亡くなってしまった。
船の上から海へと、水葬されたのだと後で聞いた時には、涙が止まらなかった。
入隊した時からずっと面倒を見てくれて、花嫁衣装も着つけてくれたのに。
最後にお別れもできないなんて、あんまりだ。
けれど、どんなに悲しんだって監察は戻ってきてくれない。
山崎監察の分まで、あたしががんばらなきゃ。
悔しい思いをして亡くなった仲間のためにも、上様にやる気を取り戻してもらって、徳川の勢力を盛り返すんだ。
あたしは無理やりに自分に言い聞かせると、江戸城にもぐりこむ手筈を考え出した。
「頼むぞ……二人とも」
副長の声が、広間の中に重々しく響いた。



