「……まだ、巻き返せるよね?」


ぽつりとつぶやくと、隣にいた総司がため息をついた。


「さあな……」

「さあって……まさか、新撰組を抜けてもののけになるつもり?」


その横顔をのぞきこむと、総司は首を横にふった。


「いいや、俺は最後まで新撰組と共にあるつもりだ。
けど、鳥羽伏見の様子から見ると、そうとう厳しい戦いになると思う」


たしかに……あっちは近代兵器を使いこなしてるし、官軍側に寝返る藩はこれからも多くなっていくだろう。

けれど、簡単にあきらめることなんかできない。

たとえ、総大将にやる気がなくても。

あたしたちが信じてきた誠を、簡単に曲げることなんかできない……。


「なあ、楓」

「ん?」


難しく考え込んでいたあたしに、総司が優しく声をかけた。


「もう離さないなんて言っておいて、今更だけど……江戸に着いたら、しばらく俺の実家にいないか?」

「総司の実家?」

「今は母が亡くなって、姉夫婦が継いでる。金を渡すから、しばらく匿ってもらえ」