幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「やだよ、総司。そんなこと言わないでってば!置いていかないで……!」


今まではどこにだってついていけたけど、あの世ばかりはさすがに無理だよ。


「大丈夫じゃないよ!総司がいなきゃ、あたし……」


大丈夫なんかじゃない。


あたしはもともと、強くないんだ。


総司がいたから、いつだって前を向いていられた。


二本の足で歩いていられた。


総司がいたから、たくさん笑って、たくさん泣いた。


生きていられたんだよ。


「……楓……」

「総司、総司……!」


ぎゅっと抱きつくと、総司はゆっくりとあたしの髪をなでてくれる。


まだ温かい総司の胸に顔をうずめて泣くと、総司は苦笑したようにふっと息を吐いた。


「ほんとにお前は……可愛いったら、ねえ、なあ……」


小さく消えゆく声。


ハッと顔を上げると、総司の手が力なく地面に落ちた。


「総司……?」


閉じられたまぶた。


整然と並んだ長いまつげは、もう微塵も揺れることはなかった。