幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



どっとものすごい音がして、朧の体が吹っ飛ぶ。


それは地面に落下し、跳ね上がって、転がって止まった。


その途端に、周りの景色が元に戻っていく。


まるで半透明の幕が、燃やされて溶けていくみたいに。


結界が破れた……ということは、朧が……。


地面に突っ伏した朧の背は、もう微塵も上下していなかった。


「あ、総司!」


そうだ、人狼を元に戻すのがあたしの仕事だった!


あたしは慌てて懐から護符を取りだす。


それを持って抱きつくと、総司の体から、獣のにおいが消えていった。


良かった、すんなり人間に戻れて。


安心すると、総司の体がふらりと傾いた。


反射的に支えると、総司は荒い息をしてこちらを見て笑う。


「仇は……取ったぜ」


手のひらが、湿って濡れる。


どうやら、呪符や弾丸にやられた傷からの出血がまだ止まっていないみたい。


「うん。ちゃんと見届けたよ」


総司が守れなかった人々のために、仇をうったこと。


だからって彼らが帰って来るわけじゃないけれど、総司の気持ちは少しは軽くなった?