幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「教えてやる義理はねえな」


総司は質問に答える気はないらしく、馬から降りて抜き身を手に走りだす。


「覚悟しろ!朧ぉぉぉぉっ!」


至近距離まで迫る。刀を振り下ろす。


朧は紙一重でそれを避け、懐から小銃を取りだした。


「まだそんなモノで戦っているのか」


「簡単に人を殺せる近代兵器は、大嫌いでな!」


右へ左へ、剣をなぎ払う。


朧はかがみ、飛んで、それを避け続けた。


総司が剣を振るうたび、空間が裂けるような音がする。


「楓、お前は手を出すんじゃねえぞ。こいつは俺が殺る!」


近藤局長や土方副長の仇を、自分で取りたいということだろう。


援護しようと懐から苦無を取りだしたけど、あたしはそのまま固まってしまうほかなかった。


言われなくても、憎き仇に鬼の形相で突っ込んでいく総司と朧の間に、入る隙間なんて一寸もない。


どうか、勝って……。


あたしにできるのは、祈ることだけだった。