「旧幕府敗走軍の中にお前がいると聞き、本当かどうか確かめてみたいと思っていた」
朧はあたしたちにした仕打ちなんて忘れたかのように、冷静にこちらを見つめる。
「まさか、俺に会うためにわざわざ蝦夷まで来たんじゃねえだろうな?」
「それほど暇じゃない。俺たちは単に、新政府軍に力を貸すためにやってきた」
俺たち……ということは、他にも岡崎の忍が何人か蝦夷に上陸しているということだろうか。
「やっぱりお前たちが噛んでやがったか」
「え?なんでそう思うの?」
「函館山の裏側は切り立った崖なんだよ。それに、海からの強風が吹く。
新政府軍が夜のうちにあの崖にへばりついて朝まで我慢してたってのを聞いて、忍の力でも借りたんじゃねえかなとは思ってたんだよ」
なるほど。忍なら、強風に吹かれる崖を登る術を知っていてもおかしくないもんね。
「さて、聞かせてもらおうか。どうやって、俺の術から逃れた?」
どうやら、朧はまだ土方さんの体に総司の魂が入っていることに気づいていないみたい。



