「お……おう!」
兵士たちは銃を抱え直し、もう一度前を向く。
総司は陸軍奉行付添の大野さんを最前列に出し、自分は一番後ろを受け持つと言った。
「退却する者は、この俺が斬り捨ててやる!」
そう怒鳴ったその顔は、鬼の副長だった頃の土方さん、そのものだった。
そして、進軍が始まった、その瞬間。
あたしたちが乗った馬の蹄が、地にめり込んだような気がした。
「なに?」
「これは……!」
地面が揺れる。空間が歪んで裂けて、伸びていく……。
「結界!?」
気づいたときには、遅かった。
視界に入る周囲の色が変わり、形がゆがみ、仲間たちが消えてしまった。
こんなに一瞬で結界を張れてしまう人物を、あたしたちは知っている。
でもまさか、蝦夷まで来ているなんて……。
外界から切り離された空間に残されたのは、あたしと総司、そして、この結界の主だけ。
「久しぶりだな。まさか、まだ生きていたとは」
何もない空間から突如姿を現したのは、銀色の短髪に、紫色の目を持つ、忍。
近藤局長と土方副長を、その手で殺めた……あたしと総司が、最も憎むべき相手。
朧、その人だった。



